『まさに世界の終わり』へ行くvol.1を発行しました
フェスティバル/トーキョー19との連携プログラムとして今秋上演予定の青年団若手自主企画vol.79『まさに世界の終わり』。
今日最も重要なフランス劇作家の一人、ジャン=リュック・ラガルス。彼の生を体現するかのようなこの作品に多くの人たちが魅力を感じており、彼が1995年に亡くなった後も世界中で繰り返し上演されています。2016年には戯曲を原作としたグザヴィエ・ドラン監督による映画『たかが世界の終わり』が公開されるなど、その主題は古びることはなく、その影は現代においてより濃さを増しているかのようです。 本作で演出を務める蜂巣ももは、2013年から青年団が運営するアトリエ春風舎で継続して公演を行ってきました。扱う戯曲は公演ごとに様々ですが、その思考と手法は演劇と身体を貫く形で変化を遂げながら続いていくものです。蜂巣はかつてはダンサーに師事し、美術作家との横断的なコラボレーションを図るなど、その経歴からは演出という言葉の中に収まらない様々なものを抱えている事が窺われます。
ここではその一端を、過去の上演作品のスケッチなどを通して紹介していきます。ここから作品への関心や興味を持って頂き、本公演の案内となれば幸いです。
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フェスティバル/トーキョー19連携プログラム
青年団若手自主企画vol.79 ハチス企画
『まさに世界の終わり』
作:ジャン=リュック・ラガルス
翻訳:齋藤公一 演出:蜂巣もも
2019年11月8日(金)-24日(日)@アトリエ春風舎
出演:根本江里(青年団) 海津忠(青年団) 串尾一輝(青年団/グループ・野原) 西風生子(青年団) 原田つむぎ(東京デスロック)
美術:渡邊識音(グループ・野原)
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ジャン=リュック・ラガルス 1957年生まれ。70年代後半よりブザンソンを拠点に劇作のほか俳優、演出家としても活動。死後とくに評価が高まり、現在、フランスで最も上演され、各国で翻訳されている劇作家である。
『まさに世界の終わり』 家族のもとを離れていた長男ルイが帰郷する。ルイは不治の病にかかったことを伝えられず、それぞれの家族の関係もままならず、言い合いし、互いの気持ちを気遣うようなもどかしい会話が延々と繰り広げられる。
『ハッピーな日々』
50代の女ウィニーはだまし絵のような焼けた荒野に一幕は腰まで埋まり、二幕は首まで埋まって、隣の男ウィリーとハッピーな一日を送ろうとする。この作家はとかく難しく考えられがちだが、これ以上でも以下でもない。
ウィニーはとても美しい。老いてなお艶やかで、また愚かだ。そうして彼女はいずれやって来る、死/この世の終わりに耳を澄ましている。
通常よりも長い期間作り込みを行った今回の稽古場は、公演2ヵ月半前に第一回通し稽古を行った。
その後俳優たちが外部出演のため不在の間に、美術の渡邊織音と何が上演にとって重要になるか、ラインを送り合って試行錯誤していた。『ハッピーな日々』が生まれた背景である戦後社会や宗教観から始まって、現代の日本の新興宗教や、イスラム国にまで手が伸びたため、リスキーな思想もたくさんあった。
人がハッピーであるために様々なことが身の回りにあるけれど、どうして必要なんだろう。そういった問いを抱えながら、糸かけ曼荼羅を基礎とした幾何学的な構造体のアイデアを採用する。複数のポイントから糸を張って緊張する美しい表面と、中身の全くない中心地点。
それと呼応するように、俳優の演技もシーンごとに苦しみや悲しみを細かくからめ、目を背けることを含めた「生きる」という歪んだ強さの表出を思考した。
私は俳優とともに楽天的で自虐的な喜怒哀楽をたくさん仕込み、お客さんも現実を一時でも忘れたら良いと思った。
(蜂巣もも 演出)