インタビュー連載 approach -アプローチ- 蜂巣もも②

December 16, 2016

震えるカラダ/演出のアプローチ

 

―先日、ちょうど稽古場ではベケットの『幸せな日々』のように老婆が布団の中に埋もれ、まるで布団も老婆の体の一部のように感じられる舞台装置が展開されていました。

老婆は串尾さんというどちらかと言うと筋肉質な男の人が白いワンピースを着て演じるのだけど、それがパンパンで、ネグリジェみたいになっている。ピンク色の布団と相まって、串尾さんが花のツボミのように、ジャングルの奥地に生息している食虫植物のようにも見えます。

その「花」のような串尾さんはどこかエロティックです。

 

そういう写真家がいますね。ロバート・メイプルソープという花ばかり接写で撮っているだけれど、すごくエロティックな。

 

―こうした舞台装置はどういう意図で発案されたのですか?

 

あれはたまたま発見したんです。稽古場にお布団があって。

もとはちょっとした塚の上に座っている絵面を想定していました。塚は墓なので、そういう古墳みたいなものの上に座っているのが良いと思っていた。それで他の俳優とのステータス関係も出せるかなと。そう思ってたんですが、稽古場にある布団を使ってみると大きなスカートのように見える。俳優が震えると布団も震える。

ただ実際それが本番で出来るかはわかりません。

わたしの場合、もとのアイデアの発想源はエロスからはじまっていないと思います。戯曲の人物がより見やすく、よりわかりやすくなるように、を考えている。あるいはそれは俳優にとってもわかりやすくなることだから。

それでやってみて一番いいなと思ったのがあの布団でした。

 

―それを見て、どういう感じを持つんですか?

 

最初から老婆はずっと座っているという戯曲の設定があり、老婆は全ての中心にいるところがあったから、ふさわしいあり方だと思いました。

俳優がただムシロの上に座っているというだけでは、なにか物足りなかったので。

 

―物足りないというのは、何が足りないと感じたのですか?

 

漠然としているのですが、なにか存在感が足りない。

わたしは大学のときに伊藤キムのダンスを学んだことが大きいと思っていますが、舞台のある人間が集中の場に立ったときに、その人の存在感が非常に大きくなることを求めています。観客は舞台の中の人間、その人のことしか見れなくなる瞬間があります。

戯曲を読むときは色々な想像をしながら読みますが、(ある)人間がずっと世界の中心にいて、その人を接写で密に見ている感覚があります。でもそのまま舞台に起しても、何か足らない。それだけじゃ聞こえてこない。

 

―聞こえてこない?

 

本当に丁寧に舞台に立つことが出来れば、その人のことを説明してくれなくても、お客さんにはわかります。静かに震えているような姿をこちらもつぶさに見るときが一番素敵だと思う。

だからそれが見えないと物足りないと思うし、小さいと思う。震えていることが分かるならリアリティのある身体じゃなくても良い。ちょっと違和感のあるような身体でより振動が伝わるのであれば、ぜひそうしたい。

 

―そのための仕掛けとして、戯曲をただリアリズムで上演するのではなく、布団に埋めることや、ゆっくりした発話のような制約を持たせる。

 

そうですね。

私自身も老婆という役が何を指すのか良くわかっていなくて、もうちょっと近づきたかった。単純にやるだけじゃ何もわからなかったんですね。

 

―話を聞いていると、存在=エロス、というような妄想も湧いてきます。ちょっとそれは先走った言い方ですけれども。

先日の稽古で老婆の動きや発話をゆっくりさせる制約を持たせていましたね。そこにも、何かしら存在=エロスの場が立ち上がってくる気配がします。

 

老婆のゆっくりした動きに関しては、まだ結果が出ていません。

あれは計算的なところがあって、何度か稽古をやった上で、ゆっくり喋ると他者を惑わす力になるということに確証は得た。老人の、他者のテンポを狂わせたりとか、非常にはっきりとした物言い、みたいなものは、何かが生まれるんじゃないかという推測です。

そこは大事なんじゃないかな。

 

―そこ、というと?

 

自分の考える演劇の時間の上で、他者を狂わせるまでの硬さ(強度でない)、結果的にそうなっている硬さ。それを見続けること、角度が変わっても、時間が変わっても、ずっと変わらない時間を見てもらうことは、今回のテーマになるのでは?と思います。

 

 

ーおわりー

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